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桜梅桃華@女装・TSF小説
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残業の果てに辿り着いた、僕の新しい世界:4

スーツの下に秘めた赤色

日曜の夜。

机の上に置かれた小さな紙袋が、部屋の中でやけに存在感を放っていた。

中身は真っ赤なブラとパンツ。

金曜の夜、瑠衣から手渡された時の笑顔が目の奥に焼き付いて離れない。


――――――――――――

「レンくんに似合いそうな下着を用意しておいたんだ。月曜はこれを着けて出勤してね。」

その場にいた真帆と茜も、意味ありげに笑っていた。

事務服姿の僕が女子トイレから出る写真を撮られている僕には、選択肢なんて存在しない。

――――――――――――


休日中は見て見ぬふりをしていたその紙袋を開ける。

指先が微かに震えて、赤い布が視界に溢れた瞬間、思わず息を呑む。

鮮やかなレースの縁取りが、部屋の暖色の照明の下で妖しく光っている。


男の一人暮らしの部屋にはあるべきではない異物。


これを……明日、一日中?



月曜の朝。いつもより眠りが浅かった気がする。

シャワーを浴びても、胸の奥のざわつきは消えなかった。

濡れた髪から滴る水が床を打つ音だけが、やけに響く。


タオルで体を拭き、袋から下着を取り出す。

まずはブラ。肩にストラップをかけると、ひんやりした感触が濡れた肌に張り付いた。

背中でホックを探し、指先が迷いながらも「カチリ」と小さな金属音を立てて留まる。

その瞬間、肩ひもが軽く食い込み、胸元のカップがほんの少しだけ不自然な膨らみを作る。

ワイヤーが胸の下を押し、位置を直そうと指を入れれば、布越しに肌が吸い付く。


次はパンツ。

両手で布を広げ、足を通す。

冷たい布が太ももを撫で、腰まで引き上げた瞬間、下腹部をきゅっと包み込む。

普段の下着では絶対に味わわない、妙な収まり方。

締め付けなのに、どこかやわらかく優しい感触が、逆に落ち着かない。


鏡の前に立つ。

鏡の中に見慣れた自分の顔と、真っ赤な下着が映っている。

下着と同じぐらいの色に自分の頬が染まるような気がして、視線を逸らした。



その上からスラックスを穿き、白いカッターシャツのボタンを留め、ジャケットを羽織る。

パッと見はいつも通り。

……でも、胸元には赤い影。

光が当たる角度によって、カッターシャツが淡く色づく。

気付く人は気付くかもしれない。


駅まで歩くたび、胸のワイヤーがわずかに上下する。

パンツのレースが腰骨を擦り、細いゴムが動くたび、体の奥に小さな熱が生まれる。

普段と同じ道、同じ朝なのに、全てが違って感じる。


満員電車に揺られる。

背中越しに人が押してくるたび、ブラが肩にずれる。

前に立つ男性が視線を胸元に落とした気がして、胸がぎゅっと締め付けられるようだった。

……いや、ただの思い過ごしかもしれない。

でも、そう思おうとするほど、さらに胸の奥が苦しくなる。



会社に着き、いつも通り挨拶をしながらデスクへと向かう。

真帆と廊下ですれ違った。

軽く会釈を返すだけで特に何も言われない。

デスクに着き、メールを確認し、資料を開く。

……なのに、下着の感触が思考を中断させる。椅子の背もたれがブラのホックに押し当たり、肩ひもが微かに引っ張られる。

資料を開いても、画面の文字が目に入らない。

脳の片隅で、常に下着の存在が脈打っている。


「レンくん、あそこの棚の上の奥にある段ボール、取ってくれない?」


瑠衣の声が背後から落ちてきた。

胸が一気に熱くなる。

「は、はい……」と答え、脚立を持ち出す。


脚立に足をかけ、腕を伸ばして棚の奥を探す。

そのとき――耳元で小さく低い声が囁かれる。


「ズボンにパンツのラインがくっきり見えてるよ。みんなに女の子の下着を着けてるって、バレちゃうよ」


はっとして後ろを振り返ると、瑠衣が小さく笑っている。

スラックスが張り、お尻の曲線に沿って、パンツのラインが浮き出ている。

男性のそれではありえない、やわらかな縁取り。


一気に顔が熱くなる。

視線をさらに後ろに動かせば、茜も真帆も、にやにやとこちらを見ている。


「ほら、段ボール、落とさないでね」


瑠衣の声が耳元に届く。

僕は慌てて段ボールを引き寄せる。腕に力を込めるたび、ブラの肩紐が食い込む。

お尻の下着のラインが気になって、視線を外したくなる。

でも、もう手を止めるわけにはいかない。素早く段ボールを引き寄せ、脚立から降りる。


「レンくん、ありがとう。助かったよ」


短く、軽やかな礼。瑠衣はそのまま離れて行く。

僕の心臓はまだ収まらない。

ふと気づけば、汗ばんだ手のひらと、下着の感触だけが残っていた。


……まだ、僕の長い一日は、ほんの始まりに過ぎないのだ。


【5章へつづく…】

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